2017年4月5日水曜日

東京国立博物館・金春家伝来の男面

トーハク金春家能面展のつづき

男面はとりわけ充実していて、いつまで見てても見あきない。
いやー、能面って、ほんと、すばらしい!

邯鄲男「天下一是閑」焼印、重文、安土桃山~江戸、16~17世紀

↑いまでも生気が宿り、物凄い気のパワーを感じる。
なによりも、名品ならではの何ともいえない品格がある。
貴人の亡霊にもふさわしい男面。

こういう逸品を見ると、良い舞い手を得たら……と、どうしても考えてしまう。
良い面であればあるほど、舞台の上で観てみたい。
能面も、舞台に出たい!舞いたい!演じたい!と訴えかけている。





中将、重文、江戸期、19世紀

↑安土桃山・江戸初期の盛期ルネサンス的均整から逸脱した能面のマニエリスム。
面打ちにもフォンテーヌブロー派のような人たちが居たんやね。

江戸時代の貴族はこんなふうに頽廃的でなよなよしていた?




大天神、重文、室町期、15世紀


↑これも素晴らしい名品!
髭の毛描き、ハリのある脂ぎった肉付きなど、汗の湿り気や体臭までも感じさせる。
《舎利》などに使われたのだろうか。

木心をこめた材から作り、頭部に走る横線は横木を接いだ跡らしい。
仏像を作るときの技法も使われているのかもしれない。

面打ちの独創性と心意気が伝わってくる。



小天神、重文、江戸期、18世紀


↑額のひび割れが青筋のように見え、怒りの表現に一役買っているのが面白い。






怪士「天下一備後」焼印、重文、江戸期、17~18世紀





十寸髪男、重文、江戸期、18世紀

↑十寸髪(増髪)ではなく十寸髪男(ますかみおとこ)って?と思ったけれど、
解説によると、金春座では「ますかみ」として伝わったが、怪士系・鷹の類面とのこと。

眉根を寄せた表情などは、茗荷悪尉を思わせる。




痩男「児玉近江」焼印、重文、江戸期、17~18世紀


↑能面の中でも、痩男や河津がいちばん怖い。
陰にこもった怨みを形にしたら、こうした能面になるのだろうか。

作曲家にインスピレーションを与えて、面に合う新作能を作らせるほどの、物語性のある表情をしている。




猿飛出、重文、室町~安土桃山、16世紀

↑《鵺》の専用面。
牙があるから「牙飛出?」と思ったら、
解説にも「牙飛出とすべきかもしれない」と書かれていた。




泥小飛出、重文、室町期、15~16世紀

↑《小鍛冶》に使用される敏捷な動きに適した小飛出。
全体的に金泥が塗られているから、
当時はかなり金ピカで、光り輝く霊狐そのものだったのではないかしら。




大飛出、重文、室町期、15~16世紀

↑《嵐山》や《国栖》の蔵王権現の役に用いる。
小飛出よりも目・鼻・口(とくに目)が大きい。



長霊癋見「キヒノケンセイ」陰刻、重文、室町期、15~16世紀


↑やっぱり室町期や安土桃山時代の能面は面白いものが多い。
この面にも、力と気迫がみなぎっている!




長霊癋見「天下一近江」焼印、重文、江戸期、17世紀

↑ものすごい上目遣いで、「ウン!」と息を溜めこんでいる。
熊坂長範のふんばり、大盗賊の意地が見事に表現されている。




小癋見、重文、江戸期、18世紀


↑《野守》《昭君》《松山鏡》の後シテに使われる。
この面は、現在でも街で出会いそうなほど人間臭く、
やけに物分かりのいい長老のような顔立ち。





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