2015年3月25日水曜日

神遊49回公演・ワキ方が活躍する能~独吟《藤戸》、一調《船弁慶》、仕舞《雲雀山》

能《張良》を終え、いくぶん興奮した気配が漂うなか、
宝生欣哉さんが場を鎮めるように藤戸を朗々と謡い上げた後、
いよいよ福王和幸師×観世元伯師の一調《船弁慶》。


今月、元伯さんの一調を立て続けに拝聴するという僥倖に恵まれた。
                   
1度目のお相手は観世流の中森貫太師、2度目は宝生流の辰巳満次郎師。
そして3度目となるこの日は、福王流の和幸さん。


最初に登場した時、福王和幸さんが太鼓方からかなり離れた場所に座ったので
ちょっとびっくり。

これが福王流の流儀なのか、和幸さんだからなのか。
(もしかするとこの方、とてもシャイなのかもしれない。)


そんなわけで通常の一調のような、囃子方と謡い手との激突感はなく、
福王さんが超然と孤高を保って謡っていくのを、
太鼓が先読みしながら「手」を入れていくような感じだった。


とはいえ福王さんの一調は、低くて渋みのある好きな謡。
これからどんどん熟成されて、芳醇なワインのように深みが増していく気がする。


元伯さんの太鼓は、
この日は違う太鼓(大ベシ用の太鼓?)を使っているのか、
それとも少し緩めに締めているのか、理由は定かではないけれど、
前回2回と比べて、やや重く、低い打音。
福王さんの声質に合っていたと思う。



そして、とても貴重な宝生閑師の仕舞《雲雀山》。

パンフレットには、
「私も此のところ足も弱り出来るかわかりませんが、懸命に勤めたいと思います」
という、謙虚なお人柄がしのばれる閑師の言葉が寄せられていた。


宝生閑師の舞には、
極彩色に塗られた仏像が長い歳月を経て文様が剥落退色し、
美しい木目が現れて黒い艶を帯びたような、古色をたたえた趣がある。





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