2015年12月23日水曜日

五雲会《巻絹》《胸突》《忠信》《葛城》《船弁慶》

2015年12月19日(土) 12時~17時40分 宝生能楽堂

能《巻絹》 シテ水上優 ツレ川瀬隆士
       ワキ御厨誠吾 アイ山本凜太郎
      成田寛人 鳥山直也 柿原光博 大川典良
      後見 宝生和英 大坪喜美雄
      地謡 武田孝史 田崎隆三 今井泰行 辰巳満次郎
         藪克徳 高橋憲正 今井基 上野能寛

狂言《胸突》 山本則孝 山本則秀

能《忠信》 シテ和久荘太郎 義経 小倉伸二郎
      トモ金野泰大 金森隆晋 法師 佐野玄宜
      立衆 金森良充 辰巳和麿 金井賢郎 朝倉大輔 藤井秋雅
         ワキ安田登
      栗林祐輔 飯冨孔明 大倉栄太郎
      後見 藤井雅之 小林晋也
      地謡 朝倉俊樹 金森秀祥 東川光夫 山内崇生
         亀井雄二 田崎甫 木谷哲也 上野能寛

能《葛城》 シテ澤田宏司
      ワキ梅村昌功  ワキツレ野口能弘 吉田祐一
      アイ山本凜太郎
       藤田貴寛 田邊恭資 高野彰 観世元伯

            後見 小林与志郎 高橋亘
      地謡 小倉敏克 佐野由於 金井雄資 佐野登
         辰巳大二郎 東川尚史 川瀬隆士 木谷哲也

狂言《福の神》 山本則秀 山本則俊 若松隆
        地謡 山本則孝 山本泰太郎 山本凛太郎

能《船弁慶》 シテ内藤飛能 子方 野月惺太
       ワキ則久英志 ワキツレ宝生欣哉 宝生朝哉
       アイ 山本泰太郎
        小野寺竜一 森澤勇司 大倉慶乃助 澤田晃良
       後見 前田晴啓 高橋憲正
       地謡 大友順 野月聡 渡邊茂人 小倉健太郎
          佐野弘宜 金森隆晋 當山淳司 金井賢郎



年末だからか、補助席・立ち見も出るほどの盛況ぶり。
能4番狂言2番を見終えたあとは2キロ近く体重が減っていたので、
ダイエットには五雲会フルコースがお勧め。
観能には体力と根性が要ります!


能《巻絹》
前日に観世流の《巻絹・神楽留》を観たばかりだったため、
両流儀の違いがよく分かって面白かった。
(観世流は小書付きだったので、小書による違いもあるだろうけど。)

宝生流は幣を持ったり、扇に持ち替えたり、再び幣を持ったりで
けっこう忙しい。
また、観世流は(小書付だったためか)橋掛りでの演技が多かったのに対し、
宝生流はほとんど本舞台上で演じられていた。
両者を比較することで、観世には橋掛りを有効活用して
華やかに見せる傾向があるのがあらためてよく分かる。

また、前日の観世流では観世流の太鼓で、神楽の前の
「密厳浄土ありがたや」から太鼓が入ったのだけれど、
この日の宝生流では金春流の太鼓で、その場合、
ノットから太鼓が打ち出したのが新鮮だった。

本曲で印象的だったのがツレの川瀬さん。
以前から注目していた方だけれど、
さらに進化されていて謡の巧いことといったら!
朗々と響きわたって聴き惚れる。

存在感もありすぎてシテを食うほどだったのは
ツレとしてどうかとも思うところもあるが、
自己アピールにはなったと思う。


地謡もうまい人が大勢入っていて、とても好かった。
宝生流は一部のベテランをのぞいて、
中堅・若手のほうが謡のうまい人が多い気がする。



狂言《胸突》
前日拝見した和泉流三宅家に比べると、
大蔵流山本家は実直で泥臭いイメージなんだけれど、
そこが持ち味で、なんともいえない面白みがある。



能《忠信》
年末になると、こういう斬組物が多い気がするのは、
赤穂浪士の影響だろうか。

シテの和久荘太郎師は男前で技術力も高いので、
こういう直面での斬り合いが美しくキマッていた。

《忠信》は以前に和英宗家のシテで拝見したことがあり、
そのときは欄干越えなども入っていて豪華な印象だったのだが、
この日は飛び安座と仏倒れだけで比較的あっさり。
(立衆の人数も一人少なめ。)

この手の演目は威勢のいい若手をたくさん揃えてなければできないため、
いま現在上演できるのは観世宗家系と宝生流だけではないだろうか。

大小鼓のノリ拍子がカッコよかった。




能《葛城》
この日の白眉。

ワキツレの吉田祐一師はたぶん初めて拝見する。
ワキの方、台詞がやや棒読みかなー。
先日の《殺生石・白頭》もそうだったけれど、
ワキ方のなかには時折こういう方がいらっしゃる。

葛城山で吹雪に遭い、道に迷った山伏一行は、
薪を背負った女に声を掛けられ、彼女の家に泊めてもらう。

前シテの女は杖を持ち、
クリーム色の水衣に茶紫地の縫箔を腰巻にした出立。
面は深井だろうか、若曲見だろうか。

負柴はクリスマスツリーのように綿雪をかぶり、
頭にかぶった笠にも雪が積もっている。

柴の庵に着いた女と山伏。
女は笠をとり、薪を下ろし、ワキ座に座る山伏の前に松枝を置いて
火をつけ扇であおいで、山伏一行に暖をとらせ、彼らをもてなす。

正中に下居したシテは、蔦葛に身を縛られて三熱の苦しみがあると
山伏に訴え、加持祈祷による助けを求めて中入り。


山本凛太郎さんは《巻絹》に続いて、この日二度目の間狂言。
場数を踏むたびにメキメキと巧くなる伸び盛りの狂言師さん。


ワキ・ワキツレの待謡「夜の行声すみて」から太鼓が入り、
神の登場にふさわしく、やや重々しい荘厳な出端となる。

このときの小鼓と太鼓の輪唱のような掛け合いが
めちゃくちゃカッコイイ!!
田邊さん、うまくなったなー。


後シテの出立は、藤模様の入った紫長絹に緋大口。
頭に戴く天冠には蔦葛がついている。
面は節木増だろうか、冷たい美形の女神だった。

シテの澤田さんの序の舞はしっとりと奥ゆかしい品のある趣。

終演後に紋付き袴に着替えた澤田師がロビーで馴染みの方々に
ご挨拶をされていたけれど、とてもさっぱりした好い御顔をされていた。


狂言《福の神》
師走なので《福の神》の上演が続きます。
大蔵流は地謡も入って、おめでたさ倍増。



能《船弁慶》
びっくりしたのが、宝生欣哉師が朝哉さんとともに
ワキツレで登場したこと。
おそらくご子息にワキツレ道の手本を見せるためなのだろう。

ワキよりも、位とグッと下げているのが欣哉師の凄いところ。

太鼓方の澤田さんの後見には元伯師。
さすがに太鼓のセッティングはしなかったけれど、
後ろからしっかり監督されていた。

シテ方だけでなく、ワキ方・囃子方も若手育成の場となるのが
五雲会なんですね。

子方さん(野月聡師の御子息)が天使みたいに可愛い!

後シテの勇壮な舞働と活気あふれる囃子で
今年のしめくくりにふさわしい切能となったのでした。











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