2015年12月7日月曜日

東京達磨会~成田達志師社中会

2015年12月7日(月)  9時45分~17時半   川崎能楽堂

(以下の番組は11時半から拝見したもののみ掲載)

舞囃子《安宅》 片山九郎右衛門
         一噌隆之 社中の方 亀井洋佑
         地謡 観世喜正 味方玄 林宗一郎

舞囃子《井筒・段之序》 友枝雄人
          松田弘之 成田達志 社中の方
          地謡 友枝真也 大島輝久

居囃子《砧》    一噌隆之 社中の方 白坂信行
          シテ片山九郎右衛門 ツレ味方玄 河村晴道

舞囃子《山姥》 友枝雄人
          一噌隆之 社中の方 白坂信行 小寺眞佐人
          地謡 友枝真也 大島輝久

居囃子《三輪・白式神神楽》 松田弘之 社中の方 亀井洋佑 小寺眞佐人
           シテ片山九郎右衛門 味方玄 林宗一郎

  
一調《玉之段》  辰巳和麿  社中の方

居囃子《卒塔婆小町》   松田弘之 社中の方 松田弘之
          シテ片山九郎右衛門 ワキ河村晴道 味方玄

舞囃子《桜川》   観世喜正
            一噌隆之 社中の方 亀井洋佑
            河村晴道 味方玄 林宗一郎

舞囃子《歌占》     味方玄
              松田弘之 社中の方 白坂信行
              片山九郎右衛門 河村晴道 林宗一郎

舞囃子《弱法師》    林宗一郎
             河村晴道 味方玄 観世喜正

舞囃子《砧》    櫻間金記
           松田弘之 社中の方 白坂信行
           本田光洋 本田布由樹

舞囃子《天鼓・盤渉》   味方玄
            松田弘之 社中の方 白坂信行 小寺眞佐人
            観世喜正 河村晴道 林宗一郎

舞囃子《清経》    河村晴道
            松田弘之 社中の方 白坂信行
            片山九郎右衛門 味方玄 観世喜正

舞囃子《融》     味方玄
             松田弘之 社中の方 白坂信行 小寺眞佐人
             片山九郎右衛門 観世喜正 林宗一郎

番外一調《柏崎・道行》   本田光洋    成田達志



はじめてうかがった川崎能楽堂とナリタツさんの社中会。
能楽研究者のお弟子さんも何名かいらっしゃって、皆さん素晴らしく、
聴きごたえありました。

京観世好きにはたまらないとっても幸せな一日でした。
京観世以外でも、大好きなシテ方さんたちの舞と謡を心ゆくまで堪能しました。

神遊最終公演のチケット争奪戦に参戦してから電車に飛び乗ったので途中から拝見。
九郎右衛門さんの舞囃子にギリギリ間に合ってよかった!
(大島さんの舞囃子は逃してしまった (T_T))

九郎右衛門さんはちょっと風邪気味っぽかったので心配です……。
どうか、どうかご自愛くださいませ。
九郎右衛門さんの舞囃子は一番しかなかったけれど、
地頭で謡いをたくさん拝聴できたので大満足。
土曜日の《殺生石・白頭》、楽しみにしています。


それにしても、成田さんの番組企画のセンスは素晴らしい!
片山家といえば《砧》と《三輪・白式神神楽》、喜多流といえば《井筒》と、それぞれの家や流儀が大切にしている曲を舞囃子・居囃子にするという豪華さ。

それに、最後の舞囃子では地謡に、片山家・林家・矢来観世家の当主・次期当主が並ぶという贅沢ぶり。
こういう組み合わせって、三響會以外ではなかなか拝見できない。

さらに、東京に拠点を置く観世・宝生・喜多・金春の四流派の夢の競演も、ありそうでなかなかない。

この「ありそうで、なかなかない」という取り合わせを実現しちゃうのが成田達志師の人脈と企画力。
だから、だから、TTR東京公演もぜひぜひ実現させてください!!


友枝雄人さんはたぶん、初めて拝見するけれど、舞囃子《井筒》は地謡の巧さと相まって感動的でした。

この社中会では舞囃子も居囃子も、東京の通常のものよりも長めで、それを一流の舞い手と謡い手が担うので、どれも能一番を拝見したような内容の濃さと充実感。


とくに、京観世による居囃子《三輪・白式神神楽》は、もう凄まじいほどの迫力で、
見ている側の身体が自然と反応してガクガク震えるほど。
地謡三人(片山九郎右衛門 味方玄 林宗一郎)だけなのに、
まるで謡のオーケストラを聴いているようなダイナミックな重厚感。

謡の力によって神代の壮大なドラマが時空を超えて能舞台に出現する。
その謡のパワーに圧倒され、全身が共振して、細胞のひとつひとつが躍動するような感覚。

この一番だけで、サンタさんから早めのクリスマスプレゼントをもらったような幸せな気分♪



宝生流から一人だけ参加した辰巳和麿さんの一調《玉之段》もよかった。
和麿さん、謡もうまいなー。



東京観世(そういう言葉があるのかしら?)から一人だけ参加の観世喜正さん。
巧くて、舞姿も美しく、謡いも抜群にうまい。好きなシテ方さんのひとり。
だけど、肩の力が抜けすぎて見えることが、かえって仇になっているのではないかと最近思うことがある。
技術的には申し分ない。
ただ、きれい、美しい、そつがない、という印象だけで終わってしまうのだ。




味方玄さんの舞は一年ぶりに拝見するけれど、この方、ほんとに凄いですね。
身体能力が最高級レベルなのはもちろんのこと、気の込め方と集中力が尋常でないほど並はずれている。
直面は完全に能面化していて、まばたきひとつしないし、
《歌占》舞囃子の冒頭は、かなり長い間、地謡前に下居しているのだけれど、
この時、味方さんはほとんど仏像化・無生物化していて、見事なまでに微動だにせず、
内面では膨大な量の気が充満しているのが感じられる。

この方は人気があまりにも高すぎて、こちらが引いてしまうことがあるけれど、人気の高さは実力の高さにしっかりと裏打ちされている。
認めます、納得です、別格です、凄い人です。



片山家と林家の違いがいちばん良く分かるのが、河村晴道さん。
林喜右衛門の端正で品格のある芸系を忠実に受け継いでいらっしゃる。
全体的に姿形がスラリとしているのも林一門の特徴。


林宗一郎さんでいつも思うのは、口がほとんど開いていないし、口元の筋肉も全然動いていないのように見えるのに、謡いがうまいし声量も非常にボリュームがあるということ。
完全に腹式の謡用の発声なのだろう。



最後の番外一調
やっぱり成田達志さんの小鼓、好きだなあ。
心地良い豊かでふくよかな音色と響き。
そして、あの幸流独特の色っぽい掛け声。
とくにナリタツさんの掛け声には女性の嗚咽のような、何ともいえない哀調と情念を帯びた色気がある。
いつまでも、いつまでも、聴いていたかった……。






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