2016年2月8日月曜日

能楽協会主催シンポジウム「江戸式楽、そして現代」 ~『式能』を軸に能楽を取り巻く現状を考える~

2016年2月4日(木)  18時30分~20時30分  国立能楽堂

Ⅰ.実演 半能 観世流《石橋・大獅子》
   白獅子 観世銕之丞   赤獅子 観世淳夫 
      ワキ森常好
   一噌隆之 大倉源次郎 國川純 観世元伯
   後見 武田尚浩 山崎正道
   地謡 武田宗和 浅見重好 井上裕久
      藤波重彦 加藤眞悟 坂真太郎

.基調講演  野村萬

.パネルディスカッション
 近藤誠一 近藤文化・外交研究所代表(前文化庁長官)

 水野正人 元2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員会CEO
 野村萬  公益社団法人能楽協会 理事長、能楽師

 観世喜正 公益社団法人能楽協会 理事、能楽師(急遽、特別参加)

 司会 山田浩司 NHK音楽・伝統芸能番組部チーフ・プロデューサー




能楽協会主催の第一回シンポジウム。
もちろん!《石橋》目当てだけど、半能だからたったの15分なのね。


で、その半能《石橋》。

予想通り、お囃子が迫力満点。
1か月半ぶりに聴く元伯師の太鼓は相変わらずカッコイイ!
天高く響くような掛け声も冴えていてやっぱり宇宙一の太鼓方さんだ。

冒頭の威勢のいい囃子のあと半幕があがり、
白獅子の姿をチラ見せしてから、いったん鎮まって露の拍子。
その後、出の囃子で本幕があがり、白獅子が勇壮に登場。

そして、大小太鼓のナガシに乗って赤獅子が勢いよく登場!

淳夫さんの舞台を見るのは久しぶり。
去年夏の《善界》は九郎右衛門さんのツレだったから、
その前の《殺生石》のシテぶりだろうか。

淳夫さんって一畳台物が得意なんだろうなー。
この日も若獅子らしく、思い切りのいい飛びっぷりで清々しい。

《道成寺》の披きに向けて着々と成長されていて、
見ているこちらも胸がじーんと熱くなる。

好むと好まざるとにかかわらず、
能楽界のサラブレッドとして生まれ育ち、
能が嫌になるような、逃げ出したい時期もあったに違いない。


でも、ある時から運命を受け入れて
全力を尽くす覚悟が決まったのだろうか。
この日の淳夫さんの姿を見ていて、なんとなくそんな気がした。


淳夫さんが幕に帰る時、盛大な拍手を送りたかったけれど、
拍手する人が少なかったので、心のなかで精一杯の拍手を送った。
赤獅子、よかったです!!



基調講演

本音を言うと、半能を見たら帰りたかったけれど、
タダで拝見してさずがにそれはアカンやろと思い、最後まで居残り。
(帰るひと、けっこういらっしゃいました。)

後方の席に移動して、本を読みながらぼーっと聴いていましたが、
わりと面白かったです。

配布された参考資料が興味深い。

資料の表面には昭和36年の「第一回 式能」の番組が載っていて、
宝生九郎・松本健三の《草紙洗》や喜多実・森茂好の《大江山》など、
伝説の能楽師による能5番、狂言4番の番組で、場所は水道橋能楽堂。

チケット代はなんと、指定席1000円、自由席500円!

1960年代の初めでこの値段って、現在の金額に換算すれば
日銀のサイトによると当時の物価は現在の約1/2だったらしいから、
指定席で2000円、自由席で1000円!
現在の金額に換算しても激安です。

公演数も当時のほうがずっと少なかっただろうし。
観客離れとか言っているけれど、
能楽は現在のほうがはるかに隆盛しているのでは?



資料裏面には、昭和39年に開かれた「オリンピック能楽祭」の番組。
これも、近藤乾三、後藤得三、梅若六郎(先代?)、銕之丞(先代?)などの
伝説の能楽師が勢ぞろい。


こういう時代の演能映像の上映会を能楽協会で主催してくれたらいいのに。
わたしも是非見たいし、需要はあると思うけれど。



パネルディスカッション

前文化庁長官の近藤誠一氏が羽織袴姿で参加。
前衛華道家のようなアーティスティックな風貌の超エリート官僚。
この方、モテるだろうなー。

日本を動かしてきただけに近藤氏が地に足のついたことをおっしゃっているのに対し、
元オリンピック招致委員会CEOの水野氏は、能楽の観客を増やすには、
歌舞伎のように宙吊りをやればいいとか、奇抜さ先行のアイデアばかり。
派手にすればいいってものでもないのだから……。


いっぽう能楽協会側は野村萬師の要請で、急遽、観世喜正さんも参加。

野村萬師は厳めしい方だと勝手に思い込んでいたけれど、
面白くてキュートな方だった。
時々、助けを求めるように喜正さんのほうを見るのも可愛らしい。
(85歳には見えません。)


喜正さんはいつもほんとうにそつがない。
座る姿勢もきれいだし、
ご自分がしゃべった後の、マイクを萬師の前に丁寧に置く所作も美しい。
出しゃばりすぎず、余計なことは言わずに、
でも話す時はユーモアを交えながらの面白いトーク。
パネリストの御三方が退場した後も、
司会のNHKプロデューサーの紹介を忘れずになさるところなど、
気配りが行き届いている。

「能楽タイムズ」今月号の対談では神遊最終公演に向けて
いまは《姨捨》のことしか頭にないというようなことをおっしゃっていたけれど、
チケットも早々に完売して、来月の公演がほんとうに楽しみ。






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