2016年10月5日水曜日

国立能楽堂十月定例公演・茂山千五郎家の狂言《合柿》

2016年10月5日(水)  13時~15時45分 国立能楽堂

狂言《合柿》シテ柿売り 茂山千五郎
      アド都の者 茂山千作
    都の者 茂山茂 茂山宗彦 丸石やすし 松本薫

能《野宮》シテ六条御息所 梅若万三郎
   ワキ殿田謙吉 アイ茂山七五三
   赤井啓三 久田舜一郎 亀井忠雄
      後見 中村裕 加藤眞悟
   地謡 西村高夫 伊藤嘉章 八田達弥 馬野正基
      遠田修 長谷川晴彦 梅若泰志 青木健一




「定例公演で、い、いいんですか?」と思うほど特別感のある豪華な公演。

開場前、図書室に立ち寄ってから1階にあがってくると、ちょうど万三郎師が楽屋入りするところだった。舞台の外でも往年の銀幕スターのような、端正なオーラと品格のある方だ。

その後、この日から始まった「宇和島伊達家の能楽」の特別展示をのぞいてから、能楽堂へ。
この特別展示については、別記事で紹介します。


まずは先月襲名したばかりの茂山千作・千五郎さんによる《合柿》から。
(おそらく実質的には東京での襲名披露になるのかな?)


千五郎家の狂言は観能最初期に2回ほど観ただけで、これまではあまり意識してこなかったけど、やはりお豆腐狂言というだけあって、関西なまりがやわらかく、軽妙で、少し甘みのある木綿豆腐のよう。

同じ大蔵流でも武骨で重々しい(それはそれで良い持ち味の)山本東次郎家とは、別流派かと思うくらい発声も節回しも違うように感じる。
こんなことを言ったら怒られるかもしれないけれど、吉本新喜劇の元祖、原点のようにも思えてくる。


新・茂山千五郎さんは声量がとても豊か。
最後の謡のところなどは、身体全体が楽器になっているのがよくわかる。

名前が人を育てるという言葉があるけれど、これからが楽しみな役者さんだ。

渋柿を食べて口笛が吹けなくなるのは、渋(タンニン)で口の中がしびれるからかな?
わたしも食べたことがあるけれど、なんともいえない感覚。
それを干し柿にして、羊羹のような甘さにするのは昔の人の知恵ですね。
柿売りも美味しい干し柿にしてから売れば、普通に高値で売れただろうに。


茂山家や山本家は、家族・親族が一致団結して舞台を創り上げていて、そういう情熱やぬくもりが観る側にも伝わってくる。
(すみません、大蔵家や善竹家についてはほとんど知りません。)

逆に、不和がある家だとそれが舞台にもあらわれてマイナスの気がたちこめ、その家・その人の舞台や芸がいまひとつ好きになれなかったりする。
確固たる技術が基礎としてあるのは当然だけど、最後の最後に人の心を動かすのは演者の人間性ではないかしら。



梅若万三郎の《野宮》前場につづく







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