2017年3月23日木曜日

友枝昭世の會《三輪・神遊》前場~熊本復興支援特別公演

2017年3月22日(水) 19時~20時45分 国立能楽堂

能《三輪・神遊》シテ友枝昭世
  ワキ森常好 アイ山本東次郎
  松田弘之 曽和正博 柿原崇志 観世元伯→小寺真佐人
  後見 塩津哲生 中村邦生 狩野了一
  地謡 香川靖嗣 粟谷能夫 粟谷明生 長島茂
     内田成信 金子敬一郎 友枝雄人 大島輝久





なんとか山場を越えて、久々の能楽堂へ。
行けるかどうかギリギリだったけど、拝見できてよかった!
ただ、この公演こそ元伯さんの太鼓で観たかった。
大曲の良い舞台であればあるほど、名人の不在がひびいてくる。
もちろん、代演の方は力の限りと尽くしていたし、全然悪くはなかったけれど、
囃子に関していえば、おいしいのになんとなくスパイスが効いてない優しい味。



【前場】
お調べを聴いてビックリしたけれど、笛もチラシでは杉信太朗さんだったのが
プログラムで確認したら松田さんになっていた。
「神遊」の神楽は笛が命だから?

ワキ(角帽子・茶水衣・灰無地熨斗目着流・紺房数珠)の登場のあと、
習ノ次第でシテが登場する。

幕があがってゆっくりと現れたシテの美しさにハッとさせられた。

出立は、渋い金茶と青みがかった銀色の見事な段替秋草模様唐織。
面は曲見だろうか。
増かと思うほど、艶やかで気品ただよう女面。


橋掛りを進むシテのハコビには重い摩擦感があり、
奥山の道なき道をゆく女の足取りと一途な思いを感じさせる。


一の松で後ろ(鏡板のほう)を向いて次第を謡い、
舞台に入って玄賓僧都に案内を乞う。

地謡「柴の編戸を押し開き」で、左手で戸を開ける所作、
「かくしも尋ね切樒」で、ワキに向かって下居、樒を置いて
「罪を助けてたび給へ」と、合掌。



〈シテの下居〉
秋の山居の寂寞とした景色が謡われるなか正中下居するシテの姿は、
定慶作の如意輪観音のように愁いを帯びた不動の美の結晶のよう。


名仏師が魂を籠めて仏像を彫りあげるように、
シテはみずからの肉体に魂を注ぎ込み、芸術品につくりあげる。


同じ型なのに、どのシテ方も、どの舞台も、それぞれ独自の下居姿があり、
先月の《東北》の下居と、この日の下居とは同じではない。

多くの名手が高齢になると下居を放棄せざるを得なくなるなか、
この佇まいの、息をのむほどの美しさ――。


わたしは奇跡のようなその姿に、ただただ見入っていた。




《三輪・神遊》後場につづく





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