2017年4月6日木曜日

トーハク総合文化展で特に気に入ったもの

東京国立博物館の常設展(2017年3月)で特に気に入ったもの。

宇治川先陣図鐔・銘 渡邊勝矩作、江戸期17~18世紀

田原の又太郎忠綱だろうか。
「宇治川の先陣我なりと、名乗りもあへず」

くつばみを揃へ河水に、少しもためらはず……
白波にざっざっと打ち入れて、浮きぬ沈みぬ渡しけり。

刀のツバという、わずか数センチの画面に宇治川合戦の壮大なドラマを描き出す。
馬の足元から白波が立ち、ザッザッと打ち入れる、その音さえ聞こえてくるよう。

全身で手綱を引く武将の勇猛果敢な姿勢。
浮きぬ沈みぬ、馬が足をもがかせて懸命に大河を渡ろうとするその躍動感!

左手には橋姫が祀られている宇治橋も見える。

サムライの美学と卓越した技にあふれた名品。




瓢鯰図鐔・銘 長州萩住 中井善助 友恒作、江戸期17~18世紀

瓢箪でナマズを押さえるという禅の公案を描いた瓢鯰図。
軽やかに宙を舞い飛ぶ千鳥が、
言語や分別にとらわれない自由な境地を暗示しているのだろうか。




【重文】褐釉蟹貼付台付鉢、初代宮川香山、1881年

本物のカニの殻に彩色して貼り付けたような、いかにも香山らしい奇抜な作品。
甲羅の縁のブツブツ感、足や爪の硬いパリパリした質感や斑紋など、
これを土の焼成によって表現するなんて、神業としか思えない。




蝦蟇仙人図、長沢芦雪、紙本墨画、江戸期18世紀


極めつけが、偏愛する芦雪のこの一枚。

後脚が一本しかない三本足の蝦蟇をリュックのように背負った怪異な姿の蝦蟇仙人。

ガマの粘膜質の皮膚にはにじみを効かせたぼかし技法を用い、
仙人の白衣、とくに袖や裾の描線を一気呵成に力強く描くことで、
摩訶不思議な妖術を駆使する蝦蟇仙人の不気味さを表現している。
(足の爪が鋭く伸びているところなども妖怪めいている。)






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