2018年1月29日月曜日

翁付絵馬・女体~喜多流

2018年1月27日(土)12時30分~17時 喜多能楽堂

能《翁》 塩津哲生
  三番三 山本泰太郎 千歳 山本凛太郎
  笛 一噌隆之 小鼓 曽和伊喜夫 住駒充彦 森貴史 大鼓 大倉慶乃助
  後見 香川靖嗣 中村邦生
  狂言後見 山本則孝 山本則秀
  地謡 友枝昭世 粟谷能夫 大村定 長島茂
     友枝真也 塩津圭介 佐藤寛泰 佐藤陽

能《絵馬・女体》老翁/天照大神 友枝雄人
  姥 内田成信
  天鈿女命 狩野了一 手力雄命 金子敬一郎
  ワキ家臣 大日方寛 
  蓬莱の鬼 山本則重 山本則秀 若松隆
   一噌隆之 曽和伊喜夫 大倉慶乃助 林雄一郎
(音声ガイド 佐々木多門)

バックステージツアー



神々との邂逅~ワークショップ編からのつづきです。


《翁》
喜多流の(というか下掛りの)《翁》を観るのははじめて。
下掛りでは面箱が千歳を兼ねるため、千歳の舞も狂言方が勤めます。
千歳兼面箱は、三番三で問答の相手と鈴の手渡しなどの役目があるから、翁帰りも、翁一人で孤独に帰るのですね(ちょっと寂しそう……)。


【三番三】
山本泰太郎さんの三番三を観るのは、これで三度目でしょうか。
今まででいちばんシャープでカッコよく、より洗練された印象。
大鼓の大倉慶乃助も気迫満点。
観ているほうも、身体が自然にノッテきます。

今月は、茂山忠三郎家・千五郎家、そして山本東次郎家と、大蔵流の三つの家の当主・次期当主の三番三を拝見する機会に恵まれたのですが、比べてみると、それぞれに特色があります。

山本泰太郎さん(東次郎家)の三番三は、東京では農耕民族的色彩がやや強いように思っていたのですが、式楽の伝統や和泉流などからの影響もあるのでしょうか、茂山家のものに比べると、人(観客)を意識した折り目正しい芸風。

京都・茂山家は寺社に奉納する機会が多いためでしょうか、神々への祈りにウェイトを置いた、比較的土の香りのする祭祀的な色合いが強かったように感じました。
(たまたま拝見したのが、奉納能だったからかもしれませんが。)

こんなふうに違いを体感できたのも、今年の正月の大きな収穫です。


【音取置鼓】
この日の《翁》でとりわけ目を引いたのが、曽和伊喜夫さん。
おそらく今まで拝見した小鼓頭取のなかで最年少ではないでしょうか。
去年6月の青翔会でも拝見していて、その時はノーマークだったのですが、この日の幸流小鼓三丁は息も合い、清々しく、聴いていて気持ちがいい。
隣の住駒充彦さんがさりげなくサポートしているのも好印象。

《翁》のあとの音取置鼓も落ち着きがあり、聴き応え十分。
小鼓方には将来有望な十代・二十代が多く、能楽界の希望の星ですね。



《絵馬・女体》
【礼ワキ】
幕が上がって、ワキの家臣が登場。
三の松で両手を広げて爪先立ち、常座でヒシギとともに一礼。
ここで大鼓が入り、真ノ次第の後半が奏されます。

【前場】
名ノリ笛でワキの名乗リとなり、道行は省かれて、着ゼリフ。
真ノ一声の囃子で、シテ・ツレが登場する。
このあと、クセもカットされ、前場は駆け足で過ぎていきます。
(ともあれ、《絵馬》は半能か舞囃子でしか観たことがなかったので、拝見できてよかった→宮の作り物の左右扉に、それぞれフックがついていて、そこに絵馬を掛けるようになっているのですね。)


【後場】
後場は一転、華やか。
出端の囃子で、天鈿女、天照大神、手力雄の順に登場。

天鈿女は、小面、牡丹の天冠、朱地長絹、白大口。
天照大神は、小面、日輪天冠、白狩衣(衣紋着付)、緋大口。
手力雄は、天神、法被、半切。

友枝雄人さんの神舞は、理知的で直ぐなる舞。

金子敬一郎さんは、天鈿女が幣を振りながら近づいていって、神楽から神舞に直ったところで安座からサッと立ちあがるところが見事。

天鈿女の狩野了一さんは先日の《鉢木》のツレが良かったので、あらためて注目したのですが、この方、舞も謡も立ち居振る舞いも、総合的に巧くてバランスが取れている。
神楽も、岩戸に隠れた女神が誘い出されるのも無理はないと思わせるほど、魅力的な舞でした。



バックヤードツアー編につづく




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